代表あいさつ

代表あいさつ

京論壇のホームページをご覧くださり、誠にありがとうございます。
京論壇は、東京大学と北京大学の学生の交流団体です。両大学の学生それぞれ約20名が、北京に一週間、東京に一週間滞在して英語で議論し、最終日に合同報告会を開催してその成果を発表します。セッション後には、学んだことを報告書にまとめて社会的に発信しています。

みなさまのお力添えにより、弊団体も今年で12年目を迎えます。この12年で、日中関係にとどまらず、世界全体の秩序が大きく変化したと言わざるを得ません。そして2016年はまさに、その変化を体現する世界的な胎動の年でした。アメリカの大統領選挙とイギリスのEU離脱という大事件をはじめとして、ベネズエラやブラジルの政治的危機、シリア内戦のさらなる激化、南スーダンの内乱、フィリピンでの法秩序の解体と、世界の各地域の歴史が動いた一年であったように感じさせられます。

その中で京論壇2016の社会的正義分科会に参加した私は、日中関係が緊張した時代に作られた京論壇という団体が、現在の国際情勢においてどういう意義を持つかが疑問でした。日本の課題が中国との対立解消だけでなく、それ以上にこの荒れる国際情勢の波をどう乗り切るかにある中で、京論壇は果たして意義があるのか。いわゆる「エリート大学生」が部屋で10人議論しても世界は変わらない。中国と日本は変わらない。その中で京論壇は意味を持つのか。そのようなシニシズムを抱えながら議論していたように感じます。

その考えは代表となった今も、一方では的確な指摘であるとは思います。京論壇は日中関係をその存在だけで劇的に変えられるものではなく、日本にも中国にもほかに解決しなければならない課題がたくさんあります。しかし、私はその中でこそ、日中関係に、そして京論壇という活動に意味があると考えるようになりました。

2016年、民主主義の意味や国際秩序の今後の形が問われました。その中で、比較的安定を見たのは東アジア、とりわけ日本と中国の二か国でした。不安定な情勢の中、世界の秩序のバランスを維持するためには大国の不断の協調と協力が必要です。そして、経済・ソフトパワーでいまだ大きな影響力を持つ日本と、世界二位の経済大国中国は、近現代を動かしてきた西欧が域内の問題を抱えて揺らぐ中、数少ない、外に目を向けられる国であります。そのため、日中関係は当事国にとってだけではなく、世界にとって、その安定性が重要となるでしょう。

その中で京論壇はどういう意義を果たすのでしょうか。学生が40人で集まって「議論」をすることの意義はあるのでしょうか。これはちょうど不安定になっているほかの地域を見れば一目瞭然です。対立が生じるのは不明確性ゆえであり、未知のものへの恐怖は憎悪と暴力の循環を生みます。それはただ知り合うというだけでは持ち合わせのバイアスがあるために解消されず、個人レベルの深いつながりによってしか是正することはできません。

ここに京論壇の第一の意義、「信頼醸成」があります。現代の不安定な日中関係において、歴史的にも対立関係がみられ、また地政学的にも対立関係が発生しやすい日本と中国の二か国の間で、なるべく若い段階から、なるべく多くの市民が、相手の国に対する不信をなくす環境を作る必要があります。

理想は全国民が相手の国の国民を知り、信頼できることですが、それができないにしてもせめて国の政策、国民の教化に当たる者が相手の国をよく知ること、その「人」を信頼する可能性を持つことが非常に重要です。その信頼をやはり日本と中国は違う国であり、その国民の考え方が相いれない場合はあります。そして、この矛盾にこそ京論壇の意義があるわけです。
京論壇は、日中の差異の認識をしてそれを受け入れつつも、両国の学生の間に信頼関係を醸成し、両国に共通する国際的な課題の解決に向けた議論を作ることを目的としています。

京論壇の第二の意義は「発見」です。大学生という多感な時期において、両国の学生が自分の本音を発見し、共有し、洗練することは、学生たちにとってかけがえのない経験になっています。実際に、断片的にではあれ、北京の空気と中国の学生になじむことは、中国に対して日本の学生が持ちがちな何とも言えない違和感の解消につながるでしょう。

また、その経験の共有と発信は、学生の純粋な経験であればこそ、大きな社会的インパクトがあるといえましょう。自分を見つめ、他者も見つめる原体験を今年の参加者に提供し、またその原体験を多様なメディアを通じて発信することを、今年も京論壇の目標としたいと考えております。

私共が12年にもわたってこのような活動を続けてくることができたことは、ひとえに京論壇の活動をご理解くださり、あたたかく活動を見守ってくださる多くの皆様の支えがあってのことです。
改めまして御礼申し上げます。今年の京論壇も、皆様のご期待にお応えできるよう、益々の躍進、団体としての進化を目指した活動を心がけます。
本年も変わらぬご支援ご鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます。

           京論壇東京大学実行委員会2017代表
              東京大学法学部3年 有元万結