こんにちは。ジェンダー分科会所属の廣中彩乃です。今回私がお伝えするのは、先日7月1日(土)に行われた、FEC collegeというイベントの模様です。
本イベントは、学生が実際に国際社会で活躍する社会人の話を聞き、意見交換をすることで、国際人材の育成や社会人と学生の交流を目的としています。The International Friendship Exchange Council(民間外交推進協会:FEC)様が国際協力に関心のある学生団体と共同で企画し、今回は2017年度第1回として「ジェンダーと国際協力」というテーマの下開催されました。JICA国際協力専門員(ジェンダーと開発)の久保田真紀子様にご講演を頂き、「どのような国際協力をすすめていくべきか —アフガニスタン女性を事例に考える−」というテーマで、久保田様のご経験を踏まえディスカッションを行いました。
まず、久保田様から、国際協力にジェンダーの視点が必要な理由として、意見や個性と関係なく性別にもとづいて社会がその人の「役割」を押し付けている現状が挙げられました。 「Gender」の概念は、民族や国・地域・時代などによって、社会の要請によって変化します。「社会の意識」によって生じている差別的な法律や制度・慣習の変革が必要です。また、スマートエコノミクスという概念が紹介され、女性の地位改善が開発効果に好影響を及ぼすということが示されました。
ジェンダーと国際協力に関するJICAの取組においては5つの優先取組課題が設定されています。ただし、ジェンダーを主眼に置いたプロジェクトの数は全体の中では少なく、ジェンダーの観点を取り入れていると言っても、その実情として、女性の動員が数合わせでしかない場合などもあるとのことです。ジェンダーの考えが国際協力プロジェクトの中で適切に組み込まれるよう、更なる取組が求められます。久保田様は、女性の「可能力」、主体的に選択し望む行為や成果に転換していくことが必要だと訴えかけていらっしゃいました。また、今後のジェンダーと国際協力に関する視点として、一口に「女性」と言っても色々な女性がおり、画一的ではないというお話にも触れられました。
さらに、久保田様からは、実際のアフガニスタンの女性警察官の実情の調査について、非常にリアルなお話も頂きました。折角の機会なので、少々紹介します。
アフガニスタンは男女隔離規範の考え方に大きな影響を受けている文化をもち、女性の再生産役割に多大な価値を見出す家父長制を採っています。そのような社会の中で女性警察官の職に就く女性達の思いには、幾つかのパターンがあるそうです。警察官になるのが幼い頃からの夢である人達。自身の性的暴力被害体験による怒りや悲しみからの「逃避」としての選択。将来、よりよい職に就くためのキャリア開発の手段として。貧困・経済的な理由による選択。こういったものに大別されます。そのような多様な思いを持った女性達が警察官になることを後押しした要因として、父母などの家族の支援や地域の女性警察官などのロールモデルの存在、女性警察官に焦点を当てたテレビドラマや映画の影響などがあるそうです。
なお、警察官の採用条件は以前より学力を重視するものとなり、現在では高校卒業程度が条件となっています。女性の高等教育進学率は向上しており、実際警察官になる女性のうち短大卒や大卒程度の学力を持つ方の割合も多いということに驚きました。実際に久保田様が現地で多数のアフガニスタン女性警察官にインタビュー等を行って集めた声について、非常に示唆に富んだお話が多く頂けました。長くなりますので、紹介は以上にさせていただきます。
改めて、イメージで語るのではなく、一次情報にあたることの重要性を感じる場でもありました。ディスカッションでは各団体ごとにアフガニスタン女性警察官に対する支援策を考案し、プレゼンを行いました。現場を知る久保田様からフィードバックを頂くことで、学生の視点とリアルな支援の橋渡しとなりました。
本イベントは、実際の現場を知るとともに、ジェンダーや国際協力に関心のある他の学生との交流の場となり非常に有意義な時間となりました。この場をお借りして、本イベントの開催にあたり尽力頂きましたFEC様、並びに司会・進行役など勤めてくださったGNLFをはじめとする他の学生団体の皆様、貴重なご講演を頂きました久保田様に感謝の意を表し、FEC Collegeの報告の結びとさせて頂きます。
農学部4年 廣中彩乃