みなさまこんにちは、エリート主義分科会所属の長谷川郁です。今回は先日行われた全体ミーティングについてお伝えします。
京論壇で毎年開催されている全体ミーティングは、現メンバーが各分科会の議論の進み具合を説明し、京論壇OB・OGの方々からアドバイスをいただくことを目的としています。5月下旬から始まった議論が徐々に温まり始め、夏休みに入り各分科会が議論を本格的に深めていく前に、議論の方向性や構造を再考し問題点を洗い出すとても良い機会となりました。OB・OGの方々はお忙しい中参加していただき誠にありがとうございました。
私が今回参加して感じたことは、他の人に説明する行為自体の重要性です。ミーティング前には説明する内容の打ち合わせを行っていましたが、本番でいざ自身の分科会の議論についての説明をOB・OGの方々にしてみると論理的に飛躍している箇所や自身の中で理解が危うい箇所が一気に出てきたように感じました。毎週固定したメンバーの間で交わされる議論の中で、徐々に前提とされ省略されていく内容が増えることは議論を円滑に進める上でとても重要です。しかし、省略されている内容をきちんと抑えていかないと、議論は進めることができても他の人に説明するためのレベルの理解ができないことを今回認識させられました。今後このように外に発信する機会は少なくなりますが、毎週の議論で不明確なことを明らかにすることや、議論のメモを取るだけでなく後に自身で議事録を作り論理構造を明確にすることで、より議論の内容への理解を深めていきたいです。
さて、全体ミーティングは各分科会の発表とフィードバック以外に、分科会同士、また現メンバーとOB・OGの方々の間の交流の場という性格も持ち合わせています。京論壇は分科会内での議論が活動の中心となるため、他の分科会のメンバーとの関わりが少ないです(恥ずかしながらミーティングで初めて顔と名前が一致した方もいました...)。その中で、全体ミーティングはキックオフパーティーと並んで京論壇が全体で集まる数少ない貴重な機会となっています。特にミーティング後に開かれた懇親会では、中華料理越しにたわいのない話から社会人として様々な方面で活躍されているOB・OGの方を交えた進路に関するお話を伺い、京論壇の縦の結びつきの強さを直に感じました。
私も「社会貢献したい」という漠然とした思いはあったものの具体的な進路に悩んでいました。それを懇親会で相談したところ、あるOGの方から一冊の本を紹介していただきました。その本は西水美恵子氏の著書「私たちの国づくりへ」(英治出版、2016)で、元世界銀行副総裁としての視点から、今の日本には「自立自助」の精神の浸透が必要であることが記されています。より具体的には、馬瀬の観光政策や震災後の大島の団体の活動を通して、問題意識を抱える地域の人々が主導して問題解決に取り組むことの大切さが描かれていました。
このように市民一人一人が社会に対して積極的に働きかけていくべきだとする考え方は、以前自身がボランティア活動を体験させていただいた時にも出会ったことがありました。しかしその時はこの考え方はどこか理想論的で、現実には政府のような「エリート」の集団が社会を引っ張っていくしかないと感じていました。一方今回西水氏の本を読んだ時は、なぜかストンと納得してしまいました。この違いがどうして生まれたのかを考えてみると、西水氏の伝え方が上手かった、また自身が以前に比べ多くの社会経験を積んできたという点があげられると思います。その中で一番大きな理由だと感じたのは、「この本が元世界銀行副総裁の西水氏というエリートが書いたものだから」です。
ボランティアの人の話を聞いても「現実が見えているのか?」と疑ってしまう一方で、エリートの話には自然と納得してしまう。
自身は教育の面でも、また家庭環境や経済面でもエリートだという自覚があります。しかし自身が無意識的に人々をエリートと非エリートに分けてしまい、エリートを信頼する一方で非エリートに対しては一種の不信感を抱いていることに気づき、自身の中に存在する差別意識に驚いてしまいました。また「社会貢献をしたい」という感情も、「エリートでない人々は信頼できないから、エリートである私が代わりにやってあげる」という感情の裏返しではないかと疑ってしまいました。もしこれが自身だけに特有の感情でないものだとしたら、エリートと非エリートが相互に抱いているかもしれない不信感は社会全体が協力して何かを成し遂げるときの大きな障害になってしまうのではないでしょうか。
自身の所属するエリート主義分科会では、「エリートは誰なのか」という疑問に加え、「エリートはどのように社会と関わっていくのが望ましいか」「エリート自体の存在意義はあるのか」などについても議論しようとしています。
かなりエリート主義分科会の話に脱線してしまいましたが、以上で全体ミーティングの報告を終えます。北京セッションまで日数は少なくなりましたが、有意義な議論ができるようにしっかりと準備をしていきたいと思います。
文科一類1年 長谷川郁