「批判するなら対案を出せ」ということばがある。あらゆる会議や議論の場で聞かれうる台詞で、現行のものを否定するのであれば、その代わりとなるプランを提示することが必要だという主張である。
しかし、対案を打ち出すという行為は、そう容易にできるものではない。ある人はこの「マナー」を無視して、とりあえず批判をぶつけてみる。他の人は、何かがおかしいと思いつつも、より良い案が見つからないことに思い当たり、黙りこくってしまう。かくして、会議は踊りも進みもせずに、煮詰まってしまう。
「批判をするなら、対案を出して欲しい」。グローバリズム分科会・北京セッションにおいて、そんな発言を一人の北京大生から聞くことができた。ただし、そのことばが意味するのは、私たちの議論作法に対する不満ではない。それは、私たちを含めた、日本社会に生きる人々の認識に対する苛立ちであった。
Universalismの本質はなにか。それは正当化されうるのか。東大側の学生のスタンスは以下の通りであった。Universalismの目指すところは普遍的な価値、例えば人権の尊重や政治参加などの推進にある。それらは絶対的に正しい価値である以上、Universalismは認められるべきである。
ところが、北京大生が発した意見は、私たちと対立するものであった。もちろん、彼らは劉氏に同情を寄せ、政府の行動が問題となりうることも認識していた。ただ、そうした言論弾圧は、中国政府にとってある意味での「人権尊重」の形なのだという。
現在西欧諸国や日本にある人々がUniversalismと呼んでいるものは、普遍的価値の推進とはいえなくなりつつあるのかもしれない。ある国が社会的背景に即して普遍的価値を追求するのを見て、自国の「追求のしかた」を押し付ける。それは、必ずしも正当化されることではない。
私たちは、多くの共通したゴールを目指している。しかし、いくつかの国ではそれらを実現する術が見つからず、苦肉の策を練っている。ある人はそこに問題があると言い、ある人は難局を前に口をつぐむ。対案は容易に出ず、会議は煮詰まっている。
経済学部4年 浦野湧
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The Guardian. Liu Xiaobo, Nobel laureate and political prisoner, dies at 61 in Chinese custody. Retrieved September 19, 2017, from https://www.theguardian.com/world/2017/jul/13/liu-xiaobo-nobel-laureate-chinese-political-prisoner-dies-61#img-1
The Guardian. Liu Xiaobo, Nobel laureate and political prisoner, dies at 61 in Chinese custody. Retrieved September 19, 2017, from https://www.theguardian.com/world/2017/jul/13/liu-xiaobo-nobel-laureate-chinese-political-prisoner-dies-61#img-1
注:
Universalismという語には様々な意味があり、今回の定義は私たちが定めたものである。この定義は、European Universalism The Rhetoric of Power (Wallerstein, 2006)で語られているものに近いと思われる
Universalismという語には様々な意味があり、今回の定義は私たちが定めたものである。この定義は、European Universalism The Rhetoric of Power (Wallerstein, 2006)で語られているものに近いと思われる