経歴:栃木県宇都宮市出身。東京大学法学部に在学中に、つくば市長選の選挙戦略に携わる。卒業後財務省に4年間勤務したのち、2016年に当選したつくば市長から要請されて、つくば副市長に歴代最年少26歳で就任する。4年間の任期を経て退任し、地方自治体の政策立案や職員育成支援の取組を開始。2021年9月より三重県みえDXアドバイザー、11月より栃木県那須塩原市市政アドバイザー。
Q. 地方での仕事に携わりたいと思ったきっかけを教えてください
A.もともと宇都宮出身であり、大学のときに上京し、都会との環境や価値観の違いを感じたことで、地方出身者として地方に貢献する仕事をしたいという思いを漠然と抱いていました。自分にとって実際に地方で活動するきっかけになったのは、在学中に携わったつくば市の市長選挙のスタッフとしての経験でした。一方で、大学入学直後から国際関係にも関心を持ち、フィリピンのスラムに滞在したり、模擬国連や京論壇で活動したりしました。学部は法学部に進みました。
Q. 国際関係を学ぶことは、地方の経営にどう役立つのでしょうか
A.国際関係を学んでいることは、地方と関わる上でも重要です 。つくば市副市長として関わったのは、当然つくば市内の企業や国とだけではありません。国際的な企業であったり、海外の自治体などと交渉することも多々あります。例えば、つくば市はMITなどが立地するマサチューセッツ州ケンブリッジ市との姉妹都市協定があったのですが、従来の文化的交流に加えて経済外交にも取り組み、つくば市の企業がケンブリッジ市の施設を優先的に使用してビジネスを展開できるようにもしました 。
Q. つくば副市長としてはどのような政策に力を入れたのでしょうか
A. 研究学園都市のポテンシャルを更に伸ばすため、スタートアップ企業の育成 に力を入れました 。つくば市では 東京へ通勤する市民も多いい ですが、もっとつくば市内で仕事のバリエーションを増やしたいと思っていました。一般的に、地方での求人倍率は高いのですが、東京での仕事と比較する方にとっては 選択肢があまり多くないのが現状です。そこでつくば市の研究成果を活かす起業家に着目したのですが、これまでは地方でスタートアップを育成しても東京に流出してしまうのが課題でした。そのようななかで在職中はつくば駅付近にインキュベーション施設を整備するなど、スタートアップ企業が活動しやすく流出しにくい環境を整えてきました。研究都市としての強みを活かすため、集積する研究機関の施設をスタートアップが使えるような 制度を作ったりもしました。また、起業のエコシステムを育てるため、起業家や研究者など様々な分野の方々が交流しやすい環境 をつくるために、ものづくりという切り口でイベントを開催したり、アーティスト·イン·レジデンスのようにアーティスト·イン·ラボラトリーという形でアーティストやデザイナーと研究者とのコラボレーションを企画したりしました。
Q. 副市長を務めるやりがいや大変さにはどういったものがありますか
A.魅力としては市民と一緒に地域のために取り組むこと、そして市役所の組織を動かしながら政策やプロジェクトを自らが主体となって動かす点です 。一方で、人と人との間で調整をしなければならないことは大変でした。自治体の運営をする上では、さまざまな利害関係を持っている人と関わることになります。本気で 都市経営に向き合うため、財務省からは出向という形ではなく転職をしました。
Q. 今後どういったことに携わっていきたいと思っていますか
A. これからも地方に貢献していきたいと思っています。地方自治体の役割は地方行政から都市経営に変わって行くと考えています。日本で都市経営という仕事を作って行きたいと思っています。 。
編集後記:毛塚さんがインタビュー中に、つくば市で政策を実行することで「個別事例を作っていきたい」とおっしゃっていたのが非常に印象的でした。全国の地方自治体がまだ使いこなせていない制度をつくば市が積極的に使うことで、他の自治体にとっての手本となることを目指しているとのことでした。さらに毛塚さんは、これらの個別事案が全国に展開されることにより、 国家レベルでの影響を与えて行くとおっしゃっていました。大きな組織には取り組みづらいイノベーションという分野にこそ地方にできることがあるのではないかと感じているようでした。地方から国を動かしていくという気概を強く感じて、聞く側にとって大きな刺激になりました。