メンバーの声① このポーズが何を模しているのかというと、英語での「" "」つまり鍵括弧である。例えば"opinion"だとか"enemy"だとか、ポストトゥルースという現象について議論をしていると、それが「ホンネとタテマエ」的な側面を持った現象だからか、ある単語をそのままの意味で用いているのか「鍵括弧つきの」意味で用いているのかを区別して示したい、という場面が多くあった。というニーズから、七日間の議論の間に、誰かが使い始めたのをきっかけにこの「鍵括弧つきの」を意味する「二本指を顔の横で曲げて見せる」ポーズはいつのまにか我々の間で頻繁に用いられるようになっていた。ちなみになぜこの動作を顔の横でやる必要があったのかといえばZoomを使っていたからで、パソコンのカメラに手を映そうと思うと顔の横の空いているスペースを活用することになる。
文化的背景も母語も異なる我々が空間を隔ててZoom越しにお互いの意見をぶつけ合うという"困難"に、いかに真剣にアツくなって取り組んでいたかを思い出させられる印象的なポーズである。
メンバーの声② 北京セッションを振り返り、「1日6時間にわたる議論」という強烈なフレーズに対する印象が大きく変わった。むしろpost-truthという問題について考えていた私たちにとって6時間では足りないくらいだった。この現象はトランプ大統領の選挙活動や英国のEU離脱の議論の際に盛んに取り上げられるようになり一種のバズワードになった。現在においてもロシアのウクライナ侵攻など世界情勢も不安定な中、post-truthは非常に重要な問題であるとの認識は持ちながら参加した。しかし、議論を重ねる中でこの現象にははっきりとした定義づけさえできていないことに気付かされた。北京大生とホワイトボードや黒板を使って図を描いてこのように抽象的な概念を言語化していくプロセスは非常に有意義なものであったし、楽しい時間だった。
また、議論の時間以外にも北京大生とは東京セッションやその先も続くような強い友情を築くことができたと思う。互いの食事の写真を送り合ったり、セッションが終わってからも中秋節などの節目に気軽にメッセージを送ったりできるような友人ができたことは1大学生として非常に嬉しい経験だった。